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Mama Luli (Tokyo)

ストリートスタイルにおいて東京に勝る都市はないかもしれない。日本の首都であるこの街には、辺りを埋め尽くすネオンの数々と同じくらい無数のクールでおしゃれな人々がひしめいている。しかし、そんな刺激過剰な視覚の海においても、Mama Luli(本名塩井るり)はとてつもない存在感を放っている。東山ダイナーカフェ、「BREAKFAST CLUB」の共同経営者でありMama Luliケータリングを率いる彼女が活気溢れる東京のフードシーンに一石を投じたのは、単に彼女の料理の腕が飛び抜けて良いからのみならず、彼女がハイファッション関係者を惹きつける人物だからでもある。

でもです、

Katomanは、ラジオ局や西新宿のレコード店に勤め、さらには自身の音楽エージェンシー Dotlinecircle を立ち上げ、バトルス、アルバムリーフ、ロカスト、マイナス・ザ・ベアー、にせんねんもんだい、などなど数多くの音源のリリースやライブブッキング、マネージメントを手掛けてきた。(現在日本での人気を不動のものとしたバトルスは1stアルバムのボーナストラックに”Katoman”という曲を収録したり、コメディアンのアジズ・アンサリの”マスター・オブ・ゼロ”のセカンドシーズンで日本人のラーメンシェフの名前でKatomanを登場させたりしている。)

2006年、渋谷センター街奥の片隅のビルにオープンしたビートカフェは、2013年から円山町に移動。開店当初から現在に至るまで生涯を音楽調達にかけるKatomanが店内の音楽のセレクション、ディレクションを担当し、店のヴァイブスをキープしてきている。アーティストや音楽愛好者の溜まり場となっている所以だ。

「ソウルブラザー」である野村訓市と BREAKFAST CLUB を開店する前の数十年間、彼女が今日の「インフルエンサー」であれば夢に見ることくらいしかできないような放蕩生活を送っていたことを思うと、そんな現象も不思議ではない。ガストロノミー業界に進出する前の自身の生活について「1980年代はずっとニューヨークのダウンタウンでミュージシャンをしていた」と語る。「1990年に東京に戻って来て、クリエイティブディレクターの仕事を始めた。GOLD とか MILK とか X+Y とかル・バロン・ド・パリとか、伝説のナイトクラブでたくさんのイベントを開いたりして」

ナイトライフ業界で長年働いた後、店のレジ係の年配女性たちが地元の人たちと挨拶がてら話していた内容をヒントに、2012年、ケイタリングビジネスを開業。ジョン・ヒューズのクラシック映画のタイトル『ブレックファスト・クラブ』をそのまま冠したお店、Breakfast Club を2016年開業。

“人と直接つながれて、歳を取っても働けるようなコミュニティスペースが作りたかった”

その目標は達成されている。ナイトライフでのキャリアで確立されたファッショナブルな都会の若者からの信頼が基盤となり、客は「口コミでついて来てくれた」とMama Luli と訓市は語る。長年の経験を誇りとする Mama Luli のこれまでのサポーターらが育っている一方、彼女は現在、訓一と共に開いた自身のレストランに新たな世代を惹きつけている。「アーティストのクリエイティブなエネルギーに惹かれる。アーティストの活動やストーリー、言動に関心を持っている。ひたすら毎日ひとりひとりに挨拶をして、お店でくつろいで過ごしてもらって、帰りは心を込めて送り出す」

当然、彼らの仕事はお客を笑顔で見送るだけではない。Breakfast Club Tokyoは、Mama Luli が毎日お店に注ぐ努力の下に成り立っている。そんなフードサービス業界では、開店前の準備段階で履いたスニーカーが違いをもたらす。その選択に秀でた Mama Luli のファンやサポーターは幸運だ。そんな彼女だから、バーバリー「アーサー」キャンペーンにうってつけの人物なのだ。デザイナーもの、ヴィンテージものを織り交ぜたコレクションを所有することに加え、Mama Luli はウェイトレスをする傍ら、スニーカー狂でもあり続けている。

vsvsvs

Mama Luli にとって良いスニーカーは姿勢を良くしてくれるものであり、また当然、自分を目立たせてくれるアイテムでもある。しかし Breakfast Club Tokyo はファッションの中心地と捉えるべき場所ではない。Mama Luli は着飾り、スニーカーを見せるスタイルを楽しんではいるが、彼女の伝えたいシンプルなメッセージは、その料理にこそ最もよく込められている。「地中に巡らされたキノコの繁殖網のように、いろいろな個人の方がつながり、支え合い、互いを刺激し合って全ての人の役に立つようなものを目指したい」

 

KATOMAN(Tokyo)

東京版タイムズスクエアとして知られる渋谷区の眩しい混沌を凌ぐものはなかなか想像しにくい。聳え、ひしめくネオンやスクリーンが知覚を刺激して余りあるそんな渋谷。O-Eastなど数々のライブハウスやVISIONやContact、HARLEMなどカルチャーの聖地とも言えるクラブが連なる道玄坂円山町エリアにあるビートカフェと呼ばれる大衆酒場が、この街のクリエイティブ層にとって熱いスポットとなっている。

Words by
engineer

世界を股にかける天才敏腕エディター