style
Where the runway meets the street

エディ・スリマン(Hedi Slimane)はCELINE(セリーヌ)で初となるメンズウェアのみでのコレクションを開催し、パリファッションウィークのトリを飾った。
エディ・スリマンを象徴するルックは、前もって想像できる。細身のテイラードジャケットや、ポケットに手を入れる異彩を放つモデル、音楽カルチャーから着想を得たスタイリング、ロサンゼルス関連、シルバーのボンバージャケット。そして、ブラック。スリマンがその特徴あるルックを作り続けるのは、それを作るのが得意で、なおかつ定評があるから。目新しさに執着するファッション業界は、スリマンの信念に敬意を表すべきである。


“A London Diary: Polaroids of the British Youth(ロンドン日記:イギリスの若者達)”と題されたCELINE 2019秋冬コレクションでは、この一線を画すデザイナーが少なからず、新しい時代やスタイル、予想外の音楽アイコンに寄り添い、新しい美学へ歩み寄っているのを垣間見れた。
コンコルド広場で行われたコレクションの開始とともに、メタリックなトゲのある球体が姿を現し、ランウェイを浮遊していく。そして、特別に制作されたカナダのポストパンクバンドCrack Cloud(クラック クラウド)のサウンドトラックが、大音量で流れ始めた。
過去に見てきたシルエットを避け、ワイドカットや、クロップド丈、フロント部分にプリーツが施されたパンツが新鮮さを感じた。また、予想しなかったカーキのパンツや、ライトブルーのデニムなども登場した。他には、ホワイトソックスと合わせた細身のシルエットやレザーのアイテムが登場。レザーバックルが付いたブーツや、レオパードのプリントをあしらったタッセルローファー、ゼブラプリントのレースアップシューズなど、壮観なシューズが目を引いた。
コレクションタイトルにもあるように、スリマンはイギリスのサブカルチャーに着目し、スキニーなネクタイにフリースライナー付きのモッズコートを合わせ、60年代のモッズファッション*を体現した。今回のコレクションでは、誰もが欲しがるパーカーや、ビジューを散りばめたチェックのブレザー、格子縞プリントのラペルとスリーブ部分がジップになったレザージャケット、そしてイエローのタイガーストライプコートなど、アウターに注目が集まった。
*イギリスの若い労働者の間で1950年代後半から1960年代中頃にかけて流行した音楽やファッション

コレクションの終盤には、伝説的サクソフォン奏者、ジェームス・チャンス(James Chance)がパフォーマンスを行い、シルバーの光沢や、細身のレザーアイテム、アニマルプリントから新たなアイテムに身を包まれたモデルが一堂に登場し、幕を閉じた。エディ・スリマンによる新生CELINE、メンズ時代の幕開けである。

Words by
engineer

世界を股にかける天才敏腕エディター