エレクトロ界の新星、フルームが確立するダンスミュージックとは
2017年にグラミー賞の最優秀ダンス/エレクトロニックアルバム部門で受賞した、オーストラリア出身の新進気鋭アーティスト「フルーム(Flume)」。R&Bやヒップホップの要素を感じられたり、ハウスやダブステップといったクラブミュージックのようなサウンドなど、多種多様なジャンルをミックスした独自のダンスミュージックが魅力だ。今回、来日したフルームにインタビューし、彼のクリエイションについてや引っ越したばかりだというLAでの生活、日本についてなどを語ってもらった。
ーー音楽を始めたきっかけを教えてください。
「音楽にずっと興味があって、小学生の頃にサクソフォーンの演奏をやっていたんだ。その後、コンピューターで音楽が作れることを知って、はまっていたね。音楽はずっと自分の趣味で、高校の放課後も遊び感覚で音楽制作をしていたよ。高校卒業後にカフェでのウェイターしたり、バイトもいくつかしてたんだけど、音楽のことしか考えていなくて、バイトはどうでもよかったんだ(笑)。当時、本当に没頭していたから。それから、『Future Classic』というオーストラリアのレーベルがコンペを行うタイミングで、彼らに自分の作品を送っていたんだけど、結果的に気に入ってくれてそのまま契約したんだ」
ーーフルームの音楽を聴いていると、さまざまなジャンルの音がミックスされていますね。それは何か具体的な理由があるんですか?
「理由というか、自分が聴きたい音楽しか作らないからかな。最初は遊び感覚で、真剣にやっていくことは全く考えてなかったんだ。どちらといえば、サイドプロジェクトみたいな感じ。よくクラブミュージックを聴いてたので、フルームはそれをベースにしていたんだけど、その後にさっき話した『Future Classic』と出会ったことで、メインのプロジェクトになってきたんだ」
ーー“遊び感覚で好きなサウンドを作っている”ということですが、それを通してオーディエンスにメッセージを何か伝えたいのでしょうか?それとも単純に楽しんで作っているのですか?
「オーディエンスに対して、自分の曲がどのように感じられるのか挑戦しようと思う気持ちもある。僕の作品にポップの部分もあるし、実験的な部分もあるしね。それは、ポップだけを聴いている人に実験音楽を紹介したいということ。逆も同じで、実験的に音楽だけを聴く人に、ポップを紹介するという感じかな。僕は常に“好きな音楽を作りたい”という気持ちだけで、楽しんで音楽を作っているよ」
ーーソロ活動の前に、「ワット・ソー・ナット(What So Not)」のメンバーとしても活動していましたね。デュオとソロの違いは何かありますか?
「ソロ活動はもっとプレッシャーがあるよね、他人には頼れないから。利点としては、自分でクリエイティブをよりコントロールすることができる。二人がクリエイティブに対してのビジョンがズレたわけではないけれど、自分でコントロールして、完結できるのはすごく楽なんだ。でも、誰かと一緒にステージにに立つこともすごく懐かしく感じてしまうよ」
ーー好きなアーティストとはいますか? 影響を受けているアーティストもいますか?
「たくさんいるよ! 『ゴリラス(Gorillaz)』からは本当に大きな刺激を受けたね。あと、『プロディジー(The Prodigy)』、『モービー(Moby)』など。『ダフト・パンク(Daft Punk)』や『ジャスティス(Justice)』もだね」
ーークラシックとかほかのジャンルの音楽もよく聴きますか?
「幅広く聴くよ。でも、全てのジャンルでもないかな、たまたま聴いているくらい。でも、やっぱり気になるのは新しいもの。Spotifyは新曲のリリースがすぐ分かるから便利だよね(笑)」
ーー最近は何を聴いていますか?
「普段聴いているのは、ちょっと変わったエレクトロニック。バンドもラップも聴くし、あとはハウスとダンスミュージックかな」
ーー第59回グラミー賞受賞、おめでとうございます。その後、生活や環境に何か変化がありますか?
「2017年1月にシドニーからロサンゼルスに引っ越してきたんだ。グラミー賞の受賞はいろんな新しいことに繋がって、たくさんのドアを開けてくれた感じ。フルームに対しての見方も変わってきたと思う。とにかく、受賞したことはすごく嬉しいよ。でもそれ以外はあんまり変わらないかな(笑)」
ーーロサンゼルスの生活はどうですか?
「悪くないよ! 慣れるまでは少し時間がかかったし、シドニーとは全然違うけど、楽しんでいるよ。僕はシドニーにずっと住んでいてたから、綺麗なビーチが懐かしいけれどね。でも、新しい発見もいっぱいできたし、新しいことがどんどん起きていて、すごくワクワクする。音楽業界の人なら、ほぼすぐに会えるし、創作とコラボレーションにはすごくいい場所だよね。インスパイアされることが多い、刺激的な街だよ」
ーー以前、アートのポップアップストアを開いていましたが、もともとアートには興味がありましたか?
「そうだね、『ジョナサン・ザワダ(Jonathan Zawada)』がアルバムのカバーをデザインしてくれたんだけれど、実は彼もオーストラリア人なんだ。昔から彼の作品が好きだったけど、一緒に仕事するチャンスがあって。本当に素晴らしい経験だった。また一緒に仕事をしたいと思うよ。今も一緒ににプロジェクトをやっているけど、音楽だけにはこだわらず、アートのプロジェクトもやり続けたいと思う。僕たちは本当にいいクリエイティブのパートナーだよ」
ーー普段は何からインスピレーションを受けていますか?
「他の音楽やアーティストとは違うかもしれないけど、僕が一番影響されるのはテクノロジーだね。普通の人より、音楽のさまざまのトーンやテクスチャーに敏感なものだしワクワクする。いい曲を作るのはとても大事だと思うけど、でもちょっと変わっている、またはサウンドを入れるのも必要だと思うんだ。よくネットでいろいろなソフトウェアのプラグインとプログラムを探して、変わった音をアレンジし、ユニークなサウンドを作るんだ。本当にクレイジーな科学者みたいに、どのようにやっていくのかも、どんな結果になるのかもわからずに、ひたすら遊んで、実験する。時にはいい作品ができたりするけど、多くの場合はそうじゃないよね。それでも自分にとっては、すごくやりがいのあることだと思う」
ーー将来的には誰とコラボしたいですか?
「『ゴリラズ』の『デーモン・アルバーン(Damon Albarn)』とはコラボしたばかりで、すごく楽しかったよ。これから一緒にやりたいアーティストはたくさんいるけど、大物じゃなくてもいいかな……。プロデューサーの『ソフィー(Sophie)』とは一緒に作品を作ってみたいね」
ーー日本にはよく来られるんですか? 日本の印象はどうですか? 好きな場所はありますか?
「これまでに日本には3回来たことがあって、今回が4度目の来日だよ。日本の印象は、雪だね(笑)。1月に来たときは、北海道のニセコに行ったんだ。スノボで二週間に行ったんだけれど、楽しかったよ。オーストラリアにはこんなにいい雪がないんだ。日本の好きなところは、ご飯が最高なところ。日本のカルチャーも好きだよ。オーストラリアに比べていろんな面で違うけど、クールだと思っている。ディテールにこだわるところも好きだな」
ーー2018年の予定を教えてください。
「今まではたくさんのツアーをやってきたから、今年は、基本的に創作活動に集中する予定だよ」
- Photography: Yuko Kotetsu
- Interview & Text: Kurumi Fukutsu/Highsnobiety Japan