style
Where the runway meets the street


ロンドンを拠点にするメンズブランドQASIMI(カシミ)が、「イマガソノトキダ」と銘打って、オープニングセレモニーでポップアップを行い、日本での鮮烈なデビューを果たした。8歳の時以来の来日だと語るQASIMIのデザイナー、カリッド・アル・カシミ(Khalid Al Qasimi)は、中東にルーツを持ち、建築にも造詣が深い。構築的なデザインとメッセージが織りなすコレクションは、社会問題への挑戦であり、ファッションのネクストステージを予感させる。

—ブランドQASIMIのコンセプトは何ですか?
いつも僕が感じていること、つまり気候変動や経済などの社会問題や政治問題についてファッションを通じて語り合う、ということが前提にあるんだ。昔はもっとコンセプチュアルでより複雑な作りのものがあるコレクションだったけれど、今はより商業的な方に寄ってきている。
—ファッションの世界に入ったきっかけは?
最初は語学、そして建築を勉強したんだ。小さい頃からファッションに囲まれて育ったから、ファッションの方へ行かない理由が見つからなかった。いろんなことにチャレンジをしてみて、やっぱりファッションの世界に引き寄せられた。合っていると確信したんだ。洋服を構築していく工程に魅了されているね。
—コレクションを製作する中で一番こだわるポイントは?素材、コンセプト、シルエットなど。
品質と構造には一番こだわっているよ。全てイタリア製の生地を使用していて、シルエットやフィット感を大事にしている。もちろんメッセージ性も大切にしているけど、これはまた別のレイヤーの話だね。
—メッセージ性について、カリッドさんを刺激する社会/政治問題とは何ですか?
周りで戦争が起きている中東で育ったから、政治関連のことについてはよく話題になる。中東出身だからこそ、この問題について語っていかなければいけないという義務を感じている。毎回のコレクションではないけれど、然るべきタイミングでこのメッセージを載せている。気候変動に関しても、政治問題に関しても、いろんな問題を語り継いでいくことが大事だし、同時に我々のなすべき仕事だと思っている。
—大学で勉強をしていた頃から、問題への取り組みに対するメッセージ性を意識していたんですか?
僕は政治的な意見を声に出す方なんだ。当時はこれがファッションといかに結びつくなんて思ってもいなかった。でも、ファッションがただのファッションであること以外の目的はないのかと自身に問い続けていた。そして、ファッションを介したメッセージで教育ができるんじゃないかと思ったんだ。
—中東の伝統と現代の接点をどう捉えて、どう落とし込んでいますか?
アラブ首長国連邦の生まれだけど、ロンドン育ちなんだ。中東らしさをあからさまに見せるというよりは、随所にさりげなく見せているよ。
—アラビア語のメッセージが刺繍された洋服も見られますが、どのようにメッセージをファッションに落とし込んでいますか?
オーバーサイズのシャツや色使いでそれを表現しているよ。例えば今回のコレクションは、“力強さ”を表現している。少し荒々しさを加えている。気候変動などの環境問題やヨーロッパの経済に関する問題など、どうなるか予想もつかない、将来への陰りがある。少し暗いムードを色使いやテクスチャーで表現していったんだ。色使いはとても挑戦的かつバイカーディテールはとても攻撃的でありながらも、知り合いでアーティストのメル・オドム(Mel Odom)とのコラボレーションでシャツなどにプリントされたロマンティックなイラストが、タフなコレクションを全体的に和らげている。「不安な未来に抱く希望」といったところかな。
—どのような過程でコレクションを製作していますか?
まずは膨大なリサーチから取り掛かる。終わりは見えないね(笑)。リサーチ後に、コレクションの方向性を決めてから、コレクションの解剖プランを作る。シャツやパンツなどのアイテムやポケットなどのディテールをまとめて、リサーチと照らし合わせて行く作業をして、コレクションができあがっていくんだよ。特に、色に関してのリサーチは入念にしている。
—QASIMIならではの色使いはありますか?
コレクションごとにムードを変えているから、ブランド独自の色使いと決めているわけではないけれど、ブラウン系のビスケットカラーやカーキはよく使っているね。この色使いをベースに、イエローやオレンジ、ピンクのネオンカラーをアクセントにしているよ。
2019年秋冬コレクションはこちらからチェック。

Words by
engineer

世界を股にかける天才敏腕エディター