Report |スタン・スミスが書籍サイン会のため来日
「アディダス オリジナルス(adidas Originals)」の『スタンスミス(Stan Smith)』と言えば、スニーカーヘッズのみならずその存在は世界中に広く知られ、一度は足を通したことのある人も少なくはないだろう。その名の由来となったのは、シュータンから覗く顔がアイコニックな、1970年代に活躍したテニス界のスター選手「スタン・スミス(Stan Smith)」氏だ。同氏は先月発売された書籍『STAN SMITH: SOME PEOPLE THINK I AM A SHOE 』のローンチを記念して、サイン会を行うため今回来日を果たした。インタビュー当日は台風の影響が心配されたが、それとは対照的に和やかな雰囲気で迎えてくれた。非常に限られた時間ながらも、この出版されたばかりの本や自身の名前を冠した伝説的シューズについて丁寧に語ってくれた。
今回の書籍出版に至った経緯をお教えください。「アディダス(adidas)」側からのアプローチだったのでしょうか?
実はこれは僕からの提案だったんだ。この本は『スタンスミス』というシューズのドキュメンタリーを記録しておきたいという想いから誕生したんだよ。世界で史上、最も売れているシューズの一つだからその功績やこれまでの全てを収めたかった。もしこの本があれば次の世代の人たちが読むことが出来るし、将来この靴について知る方法を残しておきたかったんだ。
僕がこのアイディアを「アディダス」に話したとき、彼らはすごく喜んでくれたよ。それからは出版社を『リッゾーリ(Rizzoli)』に決めたり、どうやって実現をするかというロジカルな協議を進めていったんだ。それともう一つは、どうやったらこのシューズを一番良い方法で紹介できるかも模索していった。 そこで序盤の20〜30ページは僕自身の人生について、その後の20ページは『スタンスミス』のシューズについて説明をするようにしたんだ。 どうやって始まったのか、進化していったのか、また背景にはどんな人がいるのかだとかね。そしてA to Z形式で僕とシューズにまつわるストーリーをランダムに散りばめてみた。終盤にある「ユルゲン・テラー(Juergen Teller )」によって撮影された特別な写真も気に入っているよ。最後は僕からファンへ対して綴った手書きのメッセージがプリントされている。
この本にはシューズと僕のキャリアの両方をドキュメントする意味があったんだ。
現在のご自身とadidas、またStan Smithシューズの関係性はどのようなものでしょうか?
彼らとは1972年から関係が続いているけど、僕の名前がシューズになってからたくさんのことがあったね。デザインチームがほとんどのクリエイティブな部分を担当してくれていてるから、僕はどちらかというとプロモートする機会の方が多いよ。長年かけて色んなタイプのモデルがリリースされてきたからね。これからもこの関係が続いていくと嬉しい。
これまで数々の名作が誕生してきましたが、特に印象的であったり、思い入れが強いモデルはありますか?
デザインで言えば、黒のスエード素材を使用した、僕の名前と契約が始まった年にちなんで”adidas 71”という文字がサイドに刻印されたものだね。僕の妻も同じものを持っているよ。もう一つは、ヒビが入ったようなディテールのレザーで作られ、ヒール部分にテニスボールのマテリアルをあしらったものかな。これらは全て自分でカスタマイズしたプロダクトだから、一般には販売されていないけどね。
他にも青のスエードモデルやハイトップモデル、ピンクっぽいもの、「ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)」がデザインしたシリーズもお気に入りだ。これらのシューズも今回の本に写真と一緒に収録されているよ。
最後に、オランダ人デザイナーによって作られた木靴のようなモデルは特別だね。あまり頻繁には履かないけど、すごく美しい作品だよ。
これまでで何か印象深いエピソードはありますか?
びっくりしたのは、ある企業のCEOのクローゼットを見せてもらったときだ。中にはなんと41足もの『スタンスミス』があったんだ。『コレット(colette)』のサイン会では自分のサイズが売り切れたのに関わらず買っている人に出会った。コレクション用に購入すると言うから「何足持っているの?」と聞いたらスニーカーは全部で約5000足、そのうち『スタンスミス』は60〜70足持っていると答えていたよ。レコード会社のCEOにいたっては、600〜700足だった。スニーカーがある種、流行と化しているからそれをカッコイイと思っている人もいるようだね。
そのようにトレンドの一部として扱われることについては、どのようにお思いですか?
過去4〜5年でまた人気が再燃しているね。面白いもので、どうしても流行り廃りは存在するからね。たしかに人気の波はサイクルや周期があるけど、これまでローンチしてきたものは違うバージョンだったり、デザインや素材も異なるから色々試してほしいね。
ご自身の名前を冠した『スタンスミス』シューズとは、どのような存在なのでしょうか?
これまで長年に渡り「アディダス」と様々なことやってきたけど、ずっと楽しんでいるよ。これまで彼らが作ってきてくれたものはすごく高品質だし、その一部になれたことはとても光栄だよ。
僕がなぜこのシューズが大好きかと言うと、ティーンエイジャーの子だけでなく、その両親や赤ちゃん、僕と同世代の人までも履いてくれたり、世代を超えて愛してもらっているからだね。世界中でその光景を見ることができて幸せだよ。ヒップホップやストリートカルチャー、ファッションでも色んなスタイルの人が垣根を超えて着用してくれている。今やクリエイティブな人にとっての民主的な立ち位置になっているね。値段もそこまで高くないから、このシューズを通して人々が一つになれるような感覚が好きなんだ。ヨーロッパやオーストラリア、サウスアメリカや日本など地域に関係なくね。実は日本に今回来られてすごく興奮しているんだ。ここ東京では特に受け入れてもらっているように感じているよ。
今後のプロジェクトについて教えてください。
良い質問だね。実はいくつか進行中のプロジェクトがあるよ。それに来年には新しいモデルも発表される予定なんだ。これ以上は言えないけど、この数カ月でいくつかアナウンスできると思うよ。
最後に日本のファンに対してメッセージを頂けますか?
年齢や性別に関係なくたくさんの人からの継続的なサポートに感謝しています。だけど今度からは全員がすくなくとも一足は持つルールを作るべきだね(笑)
- Interview/Text: Takaaki Miyake